竹屋菓子店は明治20年(1887年)創業の老舗和菓子屋。手作りの和菓子や洋菓子が売られていますが、先代からは「飴」が看板メニューとなり、お店の一角には50種類もの飴が並べられています。訪れたときも店の奥からは「パチッパチッ」とハサミで飴を切る音が聞こえてきていました。
お店の奥のショーケースにはケーキが並べられています。ロールケーキやショートケーキ、バターのデコレーションケーキに混じって、たぬきケーキがこちらを見ていました。
ショーケースのたぬきケーキども
こちらのたぬきケーキは三角ショートケーキタイプの様子。でも他と明らかに違うのはそのカラーリング。こげ茶とクリーム色のツートンカラーです。とりあえず2個購入(実は事前に予約して行ったんですが)。
購入後、店内・店外構わず挙動不審気味に観察していると、社長の穂積寿男さんがお店のことをいろいろ話してくださいました。お忙しい中、大変申し訳ございません…。
たぬきケーキを作り始めたキッカケはなんですか?と尋ねると、
「うちの隣の駐車場が【たぬき駐車場】って言うんだけど」
はい?
「たぬきが置いてあるの。で、たぬき駐車場。だからたぬきのケーキ作ってみるかーって」
え、そんな理由ですか?
駐車場に案内していただくと、奥まったところにある家屋の屋根の上にたぬきの置物が。
屋根の上に!
信楽焼のたぬきが!
それも、2体!
この【たぬき駐車場】、通称かと思ったら本当に【たぬき駐車場】というらしい。住所を見ると、竹屋菓子店が「川俣町字鉄炮町58」、たぬき駐車場が「川俣町字鉄炮町59」と隣り合っていることがわかります。たぬきケーキを作り始めたキッカケが「隣の駐車場の名前がたぬきだから」だなんて初めてだ…。
竹屋菓子店の裏に川が流れているのですが、川べりにベンチがあったのでそちらで写真を撮りつつ食べてみました。
横から見るとツートンっぷりがよくわかります。
顔の後ろにある茶色いクリームはしっぽに見えますね。
三角ショートケーキタイプのたぬきは毎度のことながらどう食べていいか悩みますが、今回は色が変わっているところで切り分けてみましょう。
フェイス・オフ!
竹屋菓子店さんのこのバタークリーム、あまり抵抗が無くフォークが刺さるくらいに滑らかにも関わらず、割ってもあまり型くずれもしないんですよ。相当バタークリームの製法にはこだわっているようです。それでもやはり作るのは結構大変らしく、時間に余裕があるときにしか店頭に並ばないようなんですが、お好きな方はぜひとも会いに行って欲しいたぬきです。
社長が時間を割いてくださったのでいろいろとお話を伺いました。たぬきケーキの話はそこそこに、お店で取り扱っている飴や和菓子へのこだわりや商売に対する姿勢の話など。しかしやはり印象深かったのは東日本大震災、そして原発事故に関してのことでした。
震災直後、火力・水力発電所が停止したために東北地方は広く停電しました。電気が無くてはお菓子作りはできませんし、保存しておくこともできません。そこで作ったものが「おこわ」。水道とガスは使えたので、おこわを大量に作り店先で販売したんだそうです。これが大変売れたそう。コンビニやスーパーが軒並み閉まっていたあのとき、馴染みの店舗が開いている、そして食料を売っているということは地域の人々にとても安心できることだったのかもしれません。
しかし直後の追い打ちをかけるような原発事故。川俣町は内陸の町ですが、町の東南に位置する山木屋地区は放射能濃度が高く、避難区域に指定されています。
震災と原発事故の影響で竹屋菓子店の売上も落ちたそうですが、放射能濃度の測定や原材料の産地の変更などお客さんに安心して手にとってもらうための努力、そしてそれを外に向けて発信する姿勢を取ることで持ちこたえたそう。今では全国様々なところで飴や和菓子を取り上げられてもらう機会が増えているんだそうです。
たぬきケーキに会いに来るには少し遠いかもしれませんが、竹屋菓子店の飴にならばどこかで会えるかもしれません。もしどこかで見つけたら手にとってみてください。とても手の込んだ、やさしい味がしますから。
たぬきケーキ 280円
竹屋菓子店
住所:福島県川俣町字鉄炮町58
営業時間:9:00~19:00
定休日:火曜日
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