全国たぬきケーキ生息マップ

2000年4月1日土曜日

たぬきケーキとは

たぬきケーキについて調べたり、聞いたりした情報をまとめています。はっきりした情報が無いため、憶測の域を出ないものが多いですが、参考程度に読んでください。


たぬきケーキとは何か

・たぬきを象ったケーキのこと。
・スポンジの上にバタークリームでたぬきの形を作り、チョコレートでコーティングして目、鼻、耳などを付け加えた形が基本。
・お店によって顔や体が違うのが特徴。
・バタークリームではなく生クリームを使用している店もある。
・土台部分にロールケーキ(スイスロール)を使用しているものも多い。ロールケーキが流行ったのは昭和30年代。作業効率的な部分で合体させたのだろうか。
・子どものときに食べていた人の多くが「地元の◯◯ケーキ屋のオリジナル」だと思っており、他店・他地域でも作っていることを知ってびっくりする。
・チョコレートの色とたぬきの毛の色が似ているということからたぬきケーキができたと憶測できるが、それだったら「くま」でもよさそう。多分「最初の1匹」がたぬきだったから「たぬきケーキ」が広まったと思われる。



当サイトでのたぬきケーキの定義

・当サイトでは「たぬきを模したもの」「スポンジとチョコレートが使われているもの(一部例外あり)」「目から鼻にかけてを指できゅっと摘んで作られているもの(一部例外あり)」を「たぬきケーキ」と定義しています(あくまで当サイトの定義ですので何をたぬきケーキと呼んでも別に構わないと思います)。



たぬきケーキの歴史

・1950年代中盤に日本のどこかで誕生(と推測)。分かってる範囲で最古のたぬきケーキは六本木にあったクローバーの田中邦彦氏が作成した"BRAIREAU DO JAPON"。ただし、前述の定義には当てはまりません。
(※青森の発祥という意見を聞きますが、多分それは「知っとこ!」で青森のたぬきケーキが紹介されたことからきているような。ちゃんとした出が分からないのでなんとも言えませんが、広まり方から考えると青森発祥ではないと思われます)
・広まり方は、修行先で作っていた、旅行先で入った店で作っていたものを参考にした、お菓子作りの本に書いてあった、など。地域の洋菓子組合が企画した研修に有名なパティシエを呼び、そのときに作り方を教えてもらったということもあったそう。
・高度経済成長期に、老舗ではない「町のケーキ屋」が商店街に多く出来、そこでの子供向けメニューの一つとして作られることから広まったのかもしれません。
・山崎パンが作って系列の店に卸していた。
(ちなみに青森ではイギリストーストで有名な工藤パンも作って卸していたようですが個人的には未確認)
・おそらくピークは1960年代後半~80年代。洋菓子店の方に伺うと「ショートケーキやモンブランなどと同様、あって当然だった」という意見もあるほど、一時期はあらゆる洋菓子店で見られた様子。90年代以後は、コンビニやおしゃれなケーキ屋の増加、スイーツの多様化、商店街の衰退、ケーキ職人の高齢化などが原因で、いわゆる「昔ながらのケーキ屋」の減少とともに徐々に数を減らしている。また、たぬきケーキ自体非常に手間のかかる製法(1体1体成形しなければならない、気温次第で出来が変わる等)のため、作るのをやめてしまうところも多い。
・一方で、老舗洋菓子店の「売り」として、2代目・3代目が継いで作っているところもある。



たぬきケーキとバタークリーム

・生クリームが高価だったことと、冷蔵・保存技術が現在ほど発達していなかったため、バタークリームを使ったケーキが多かった。
(※バタークリームは常温でもある程度保存できる)
(※冷蔵ショーケースが普及し始めるのは昭和30年代後半~)
・加えて、バタークリームは固まりやすく、成形しやすかったことがたぬきケーキ誕生につながっていると思われる。
・ちなみに戦時中に価格統制されていた各種材料は、1950年(昭和25年)に乳製品、1952年(昭和27年)に砂糖、小麦粉の価格統制が撤廃された。加えて、1940年から輸入が止まっていたカカオ豆は1950年(昭和25年)に輸入が再開、1960年には輸入が自由化された。



たぬきケーキの名前

・「たぬき」「たぬきケーキ」「ポンポコ」「ポンタ」など、そのままの名前で呼ばれることが多い。
・以下、珍しい呼び名
  • ラクエンドッグ:多分ラクーンドッグのことと思われる(未確認)。ラクーンドッグ(raccoon dog)は英語でたぬきのこと。ちなみに raccoon だけだとアライグマのことを指します。
  • バジャー(badger):英語でアナグマのこと。たぬきはヨーロッパには生息していないため、それに近い種であるアナグマを、さらに英語にすることでイメージを洋菓子っぽくしているのではないでしょうか(憶測)。ちなみにバジャーをバドガーと呼んでいる(読んでいる)ところもあります(札幌にあったニシムラなど)。
  • ブレロ:フランス語でアナグマのこと。たぬきケーキを作っている洋菓子店は「フランス洋菓子」と掲げているところが結構多い。そのためバジャーと同じで、フランス語にすることでイメージをフランスっぽくしているのではないだろうか(憶測)。ところで「ボレロ」という表記をしているところがありますが(富山のリンデンバウムなど)、ブレロと同義かどうかは未確認です。


たぬきケーキのかたち

・たぬきケーキにはいろいろな形がありますが、大まかに分けてみました。
  • だるま型:スポンジやカップケーキのの上に頭部を乗せ、全身をチョコレートで覆ったもの。現存するものでは一番多いタイプではないでしょうか。
  • 三角型:丸い状態のホールケーキを等分に切った、よくあるショートケーキのような形。たぬきの顔が内向きのものと外向きのものがあります。
  • 四角型:四角い状態のホールケーキを等分に切った形。
  • 横ロールケーキ型:ロールケーキを切って横にしたものの上にたぬきの上半身を置いたタイプ。基本的に雪だるま型に近いが、長崎屋洋菓子店の仰向けのたぬきもいて侮れない(何が)。
  • 縦ロールケーキ型:ロールケーキを切って縦にしたものの上にたぬきの顔を置いたタイプ。四つん這いに歩いているたぬきっぽく見えるといえば見えるかもしれない。※この型は2017年現在絶滅している恐れがあります。
  • プチフール型:下半身がタルトで一口タイプのもの。基本的には雪だるま型だが小さい。商品名も「プチフール」なことが多い。


たぬきケーキを作り続ける目的は何か

・たぬきケーキは人気商品なんです!
 子どもたちのからの支持が依然として高いのでやめられない。
 かつてたぬきケーキを食べて育った世代が大人になり、自分の子どもに買って親子2代・3代に渡ってのファンも存在する。



たぬきケーキって知らないんだけどそんなに有名?

当ブログが様々なメディアで取り上げられたせいか、たぬきケーキが前に比べて少しばかり有名になった気がします。その一方で「たぬきケーキってそんなに有名?知らないんだけど!」という意見もたまに見受けられます。なぜでしょうか。理由を考えてみました。

理由1. そもそも商店街にたぬきケーキを作っている店が無かった
 たぬきケーキは全盛期には多くのケーキ屋で作られていたようですが、すべてのケーキ屋ではありません。知らないという方の地元商店街のケーキ屋ではたまたま作っていなかったためだと考えられます。

理由2. 親の買い物ルートから外れていた
 幼少期は親に連れられて買い物に行っていたわけで、単純に親がたぬきケーキのある場所に寄らなかった可能性も考えられます。たぬきケーキ自体はもしかしたら地元の商店街にいたかもしれないけど、親が好きなケーキ屋は別にあったとか、和菓子が好みだったなどの理由でたぬきケーキにめぐり逢うきっかけが無かったとも考えられます。



たぬきケーキは絶滅危惧種か、について

たぬきケーキは「絶滅危惧種」と形容されていたりしますが、本当でしょうか。
2014年現在でたぬきケーキを製造・販売しているお店は全国に100軒以上確認しています。町のケーキ屋さんから何代も続いてい和洋菓子屋さんまで、たぬきケーキは全国各地で作られています。なんだよ、絶滅危惧種というわりにはかなり多くのところで作ってるじゃないの、と思われるかもしれません。

ただ、個人的には向こう10年で多くのたぬきケーキがいなくなってしまうと考えています。
たぬきケーキがいなくなることは、ケーキ屋さんの閉店とほぼ同義です。高度経済成長期にできた「町のケーキ屋さん」のご主人は、その多くが60代から70代。世代交代が急がれますが、後継者のいないお店は閉店を余儀なくされています。
東京都内のたぬきケーキの生息地は、ここ5年で3箇所無くなりました。某所で100年以上続いている和菓子屋のたぬきケーキ、店主の方は「跡取りいないし、あと10年もやれない」とおっしゃっていました。大きく企業化された菓子店で作られているたぬきケーキはそれなりに安泰だと思いますが、自分の周りに棲む、商店街のアイドルたるたぬきケーキの多くはそのうち消えてしまう運命にあります。もしかしたらそれは明日かもしれません。

この運命を私達にはどうすることもできませんが、たぬきケーキがそこに棲んでいるのなら、たまに会いに行き、そういうケーキがあったと記憶しておくのが彼らのためなんじゃないかと思っています。

たぬきケーキは抜きにしても商店街ケーキ屋さんというのは非常に大事な存在。今のようにコンビニが乱立する以前は地域の「甘いもの」を一手に担ってきたわけです。ある意味においてはその地の甘さの基準とも言えます。
また、ケーキ屋さんは非常にポジティヴな存在。誕生日やお祝いごとなど、基本楽しいとき、嬉しいときにケーキ屋さんに行きますでしょ(複雑な感情は置いといて)。ケーキ屋さん自体もそれなりにメルヘンチックな外観だったりして、子供時分には行くだけでワクワクしていました。そんなケーキ屋さんが商店街から無くなっているのは大変残念なことだと思いませんか?

そういった意味で、大変微力ではありますし責任も持てませんが、たぬきケーキを通して街のケーキ屋さんを見直すきっかけになればいいなぁという思いが私にはあったりします。なので、たぬきケーキの有無に関わらず、たまには地元のケーキ屋さんのケーキを食べてくださいな。



当ブログとたぬきケーキの盛り上がり

このブログは元々運営していた個人サイトからたぬきケーキだけを抜き出して作りなおしたもので開設は2007年になります。

たぬきケーキは一部で盛り上がりはあったものの、一般的には知られていなかったり、忘れ去られていたものでした。ちなみに2010年くらいまでは1カ月のアクセス数は100くらいでした。

転機になったのは2013年、exciteニュース コネタ で取り上げられたときのことです。この記事はexciteだけではなく、様々なニュースサイトにも掲載され、各種SNSでかなりの反響がありました。そのためYahoo!の検索ワードランキングでも上位にのぼり、さらに記事が拡散されていくという自体に。線でしか構成されないアクセス数のグラフが面になりましたからね。ビビりました。この記事のおかげで「たぬきケーキ」の認知度はかなり上がったのではないでしょうか。

2015年までにexcite、あさイチ、怒り新党という感じでビッグバンが3回ありました。最初は「知らない」「懐かしい」という意見が多かったものが、最近は「食べた」「近所の○○にある」という意見が増えてきたように思います。少しは洋菓子店のお役に立ててるのかもしれません。



Googleトレンドでの「たぬきケーキ」検索結果と当ブログのアクセス履歴。